週刊医療情報インデックス
2008年11月第2週 (2008.11.11~2008.11.17)
- 【ウイークリーダイジェスト】
- 【週刊マスコミ論調】
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- ■医療事故、医事紛争、副作用
- ■その他事件など
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- ■主な連載(医療全般)
- ■環境問題
【ウイークリーダイジェスト】
■オンライン請求の手挙げ方式「適当でない」/政府答弁書
日本医師会と日本歯科医師会、日本薬剤師会が共同声明として、レセプトオンライン請求の完全義務化を撤廃し、医療機関や薬局の自主性に委ねる「手挙げ方式」とすべきと主張していることに対し、政府は11月11日の閣議で決定した答弁書の中で「すべての保険医療機関等がオンライン請求を行うことによって、初めて医療保険事務全体の効率化を図ることが可能となるものであり、個別の保険医療機関等の判断に委ねることは適当でない」と明記し、手挙げ方式は採用しないとの見解を示した。
答弁書はさらに、(1)オンライン請求義務化の施行までに十分な準備期間を設けている、(2)レセプトコンピューターを使用していない小規模な保険医療機関では一定の猶予期間を設けている、(3)事務代行者を介してのオンライン請求を認めている─の3点を挙げ、「すべての保険医療機関がオンライン請求の義務化に対応することは十分に可能であると考えている」とした。辻泰弘氏(民主)の質問主意書に対し答えた。
■医療行為可能な「療養介護士」創設/厚労省、介護ビジョンでたたき台
厚生労働省は11月12日、「安心と希望の介護ビジョン」会議(座長=前田雅英・首都大学東京都市教養学部長)でビジョン案のたたき台を示した。たたき台では2025年を見据えて取り組むべき施策を提示。医療と介護の連携強化のため、介護従事者が経管栄養や喀痰吸引などの医療行為を行える「療養介護士」(仮称)の創設を盛り込んだ。介護従事者の雇用環境の改善については、各事業所の労働条件や給与水準の公表を推進すべきとした。20日に開く次回会合でビジョンの取りまとめを行う。
たたき台では、団塊の世代が75歳以上になり切る25年を見据えた施策を、(1)高齢者が地域づくりに貢献できる環境づくり、(2)介護の質の向上、(3)介護従事者にとっての安心と希望の実現-の3点から提案した。
「介護の質向上」として提案した「療養介護士」は、介護と医療の継ぎ目のない連携に向けて、現在の介護従事者には原則として認められていない経管栄養や喀痰吸引を行えるようにすることを想定している。厚労省老健局の大澤範恭総務課長は「介護職も一定の医療行為ができる資格を創設すれば、看護師がいなくても介護の現場で医療行為をすることができる」と説明した。
また、24時間・365日対応可能な訪問介護・訪問看護のサービス提供拠点の整備や、訪問リハビリステーションの創設による在宅生活支援などを提案した。
介護従事者対策に関してたたき台は、介護保険は主に保険料と公費で成り立っており、事業者には介護従事者の雇用条件を整備する公的な責任があると指摘。雇用環境の改善のために、介護従事者の労働条件や給与水準の公表を推進すべきとした。公表に当たっては「基本的にすべての事業所を目指す」と明記した。
このほか、意欲ある高齢者が地場産業や地域活動に参加するために支援する「コミュニティ・ワーク・コーディネーター」の養成を提案した。厚労省が実施主体となり、今後10年間で年間300人ずつ養成するとしている。
高齢者住宅の整備では、公的賃貸住宅のケア付き住宅化などを盛り込んだ。
■介護報酬改定率「前倒し」「3.0%増」に厳しい意見/給付費分科会
厚生労働省は11月14日、社会保障審議会・介護給付費分科会に、政府の追加経済対策に盛り込まれた次期介護報酬改定3.0%引き上げと、それに伴う介護保険料上昇の軽減措置について報告した。改定率決定の前倒しや引き上げ幅に対し、委員からは「分科会を無視している」「3.0%引き上げの根拠は何か」「介護従事者の処遇に反映されるのか」など厳しい意見が相次いだ。
同日は三上裕司委員(日本医師会常任理事)と川合秀治委員(全国老人保健施設協会長)、武久洋三委員(日本慢性期医療協会長)が連名で「改定率と分科会のあり方に対する緊急要望」を提出した。プラス改定には「介護の厳しい現状を認識した証左」としつつも、「社会保障費2200億円削減について議論せずに示され、根拠に乏しく『焼け石に水』の感が否めない」と指摘。改定率決定の前倒しについては「分科会の本格的議論の最中にまったく別次元から発表され、強い失望を感じる。こうした拙速な政策で介護サービスそのものが崩壊の危機に瀕する」とした上で、介護報酬改定に当たっての分科会の設置意義の確認を求めた。
厚労省老健局総務課の大澤範恭課長は、3.0%増の根拠について「2006年度改定からの賃金と物件費などの上昇率を勘案して1%弱。これを踏まえ、介護従事者対策は緊急課題との認識から3.0%とした」と説明。分科会の位置付けについては「介護保険法などの法令を根拠に諮問を行う。前回も政府が予算編成過程で決めた改定率に基づき個々のサービスの内容を検討した」と述べ、従来通りの手続きであることを強調した。
■産婦人科医の労基法違反調査「実施の考えない」/答弁書で政府見解
政府は11月14日の閣議で決定した答弁書で、産婦人科医の勤務実態について労働基準法違反かどうかの観点から新たな調査を実施する考えはないとする見解を示した。山井和則氏(民主)の質問に答えた。
山井氏は、産婦人科医の月間平均在院時間が301時間だったなどとした日本産科婦人科学会の調査結果を取り上げ「労基法に違反しているのではないか」と見解をただした。
これに対し答弁書は「産婦人科医が勤務する事業場で労基法に規定する協定が締結されているかどうかが明らかでない」などとして明確な答弁を避けた。さらに「産婦人科医が勤務する事業場も含め、申告があった場合など労基法違反の疑いがある事業場には臨検などを実施している」とし、新たな調査の可能性を否定した。
■医師の手当増額、人事院勧告を完全実施/政府
政府は11月14日午前の給与関係閣僚会議と閣議で、国家公務員の月給と期末・勤勉手当(ボーナス)を据え置く一方、国の医療機関で働く医師の手当増額を求めた2008年の人事院勧告の完全実施を決めた。月給、ボーナスとも据え置くのは06年以来、2年ぶり。
政府は関連法案の今国会提出を目指す。ボーナスは年4.5カ月。給与の据え置きにより、一般行政職の平均年収は644万3000円(41.1歳)となる。
医師の手当増額は、国立がんセンターを含む高度専門医療センターなどの医師確保が目的。ほぼすべての勤務医が対象となる初任給調整手当を平均で年間約127万円引き上げ、民間医療機関との格差を縮める。
また、1日8時間としている所定勤務時間を09年度から15分短縮して7時間45分とする。このほか、本省勤務の若手職員に対する手当も新設する。【共同】
■消費税の引き上げ幅「踏み込む時期ではない」/政府税調
政府の税制調査会は11月14日、2009年度税制改革の答申に向けた議論を再開した。会合後の会見で神野直彦副会長(東京大教授)は、社会保障財源確保に向けた消費税の具体的な引き上げ幅や時期については「07年度の答申でも盛り込んでいない。現段階で方針を変える考えはない」とし、答申への記載に否定的な見解を示した。
ただ、社会保障・税財政改革の中期プログラムなどが今後策定された段階では「別の考え方を出す可能性はある」と含みを残した。中期プログラムに関しては「07年出した答申に沿った形で着実に進めてもらいたい」と述べた。
政府税調は11月末までに答申を取りまとめる予定。
■OTCネット販売規制強化の撤回を/規制改革会議が見解
政府の規制改革会議(議長=草刈隆郎・日本郵船会長)は11月11日、一般用医薬品のインターネット販売の対象を、最も副作用のリスクが低く、情報提供が義務化されていない「第3類医薬品」に限定する厚生労働省案の撤回を求める見解を発表した。草刈議長は同日の会見で、厚労省がネット販売規制の根拠となるデータを明示しない場合には、厚労、規制改革担当の両大臣間の折衝に発展することもあり得るとの見方を示した。
■政策決定の透明化など課題に/厚労行政在り方懇で論点整理
厚生労働行政の在り方に関する懇談会(座長=奥田碩・トヨタ自動車相談役)は11月12日、首相官邸で4回目の会合を開き、土居丈朗構成員(慶応大准教授)らがまとめた議論の整理案について話し合った。社会保障費の安定確保に向けた予算・決算の仕組みの改善や政策決定過程の透明化を課題に挙げた。ほかの委員からは「目玉となるような方針を示す必要がある」などの意見があった。さらに議論を進めた上で年内をめどに中間的に取りまとめる方針だ。
整理案で示した論点は、大分類で「行政運営の在り方」「行政組織の在り方」「その他」の3点。エビデンスに基づいた政策立案に向けた研究機関の活用や各種調査などの実態把握の方法、審議会や検討会の在り方、情報開示の具体的な方法などについて議論を進めるべきだとしている。政策効果の点検や改善の適切化に向けた「PDCAサイクル」の活用方法なども盛り込んでいる。
大熊由紀子構成員(国際医療福祉大大学院教授)が9月の同懇談会で「日本の医療費の大部分は水増し請求だ」などとして関連データの開示を求めたのを受けて、厚労省は同日の会議で「かなりの部分が水増しであるとは認識していない」との見解を示し、2006年度の医療機関に対する監査・指導の実施状況を示す資料を提出した。
大熊構成員は「生データを出してほしいという議論がこの懇談会でも進んでいた。まとめられた数字を出されても、本当かどうか分からないところがある」と不満を述べた。
■失業保険積み立ては過剰/無駄ゼロ会議、厚労省に見直し要求
政府の「行政支出総点検会議」(無駄ゼロ会議)の作業チームは11月11日の会合で、失業保険を扱う労働保険特別会計(雇用勘定)の約5兆円の積立金が失業率見込みに比べて過大であるとして、所管の厚生労働省に見直しを求めた。このため、09年度の国庫からの資金投入も不要だと伝えた。
会合では、同特会を含め、13特会・勘定について剰余金の活用策や積み立て水準の見直し、国民への十分な説明を所管省庁に要請した。同会議は、各省庁からの回答を踏まえ、12月上旬にも指摘事項をまとめる。
作業チームは、労働保険特会積立金について「景気見通しを基に失業率を算定するなど、定量的、科学的、客観的方法で水準を説明すべきだ」と指摘。また、国債償還に充てる財政投融資特会の資金を追加経済対策の財源とすることに関し、財務省に「一次的、異例の措置であることを国民に分かりやすく説明すべきだ」と注文を付けた。
無駄ゼロ会議は、歳出削減を目的に08年7月、官房長官の下に設置した。メンバーは座長の茂木友三郎キッコーマン会長ら10人。
■「二階発言」で紛糾、経産省局長が大臣発言を撤回/参院厚労委
妊婦が都立墨東病院などで受け入れを断られて死亡した問題について、二階俊博経済産業相が「医師のモラルの問題」などと発言したことをめぐり、11月13日の参院厚生労働委員会は質疑がストップするなど紛糾した。結局、経済産業省の近藤賢二商務情報政策局長が、大臣の発言を撤回した。足立信也氏(民主)が追求した。
二階経産相は10日、舛添要一厚生労働相と妊産婦死亡事故の再発防止に向けて会談した中で「政治の立場で申し上げるなら、何より医師のモラルの問題だ。忙しいだの人が足りないだのというのは、言い訳に過ぎない」と発言したとされる。足立氏によると、この発言をめぐり、日本医師会など医療関係者から多数の抗議文が寄せられているとし、二階経産相の真意をただした。
二階経産相は経済産業委員会出席のため欠席。代理出席した近藤商務情報政策局長は「発言の真意は、今回のような悲しい出来事を2度と繰り返してはならず、そのために厚労省、経産省を挙げてITを活用して情報システムを構築し、導入を促進させたいということだった。その際、医師も忙しくて大変なのは理解できるが、専門的な立場から全面的に協力してもらいたいという趣旨だった」と弁明。「今回の発言が医療関係の皆さんに不快な思いをさせたのであれば、おわび申し上げる」とも述べ、事態の収束を図った。
ただ足立氏は矛を収めず、「政治の立場」や「医師のモラルの問題」との発言の真意について再度、説明を求め、一時審議が中断した。
審議再開後の冒頭、二階経産相と打ち合わせた近藤局長が「医療に携わる皆様に誤解を与えたことをおわび申し上げ、発言を撤回したい」と大臣発言を取り下げた。
■どこの財源であれ、剰余分は医師不足対策に/舛添厚労相
舛添要一厚生労働相は11月14日の閣議後の会見で、道路特定財源の一般財源化によって医師不足対策などに財源が回る可能性について「基本的にはどこからの財源であれ、予算編成過程で剰余があればそれを回すということ。私としては、きちんと社会保障と医師不足が手当てできるお金を、どこからでも良いから探してくれという立場だ」と述べた。2009年度予算編成で医師不足対策などへ回す具体的な財源については「まだ何も決まっていない」とだけ述べた。
舛添厚労相は5月の「安心と希望の医療確保ビジョン会議」で、医師養成数増に対する財源として「道路特定財源の一般財源化もチャンスだ」と述べ、社会保障財源に回すことに期待感を示していた。道路特定財源については、麻生太郎首相が追加経済対策として1兆円を地方へ配分するよう指示。与党内で一般財源化後の予算配分について議論が始まっている。
■2200億円の削減、あらためて「限界」/舛添厚労相
舛添要一厚生労働相は11月14日の衆院厚生労働委員会で、社会保障費の自然増2200億円削減について、あらためて「限界にきている」との認識を示した。その上で「09年度の予算編成過程で2200億円の取り扱いについてもきちんと議論したい」と述べた。清水鴻一郎氏(自民)の質問に答えた。
舛添厚労相は、予算編成過程で安定した財源が得られれば医師不足問題などに充てると強調。「そういうところに重点的に、限られた予算が配分されることは望ましい」と語った。
同日の厚労委員会では民主党の岡本充功氏も「大臣の職責をかけて2200億円削減を撤廃してほしい」と求めた。
■保険料の上限引き上げに否定的見解/舛添厚労相
舛添要一厚生労働相は11月14日の衆院厚生労働委員会で、日本医師会が提案している高額所得者に対する保険料の上限引き上げに否定的な考えを示した。舛添厚労相は、保険料の上限を引き上げるより、医療費に占める税の割合を増やす方が合理的との見解を示した。長崎幸太郎氏(自民)の質問に答えた。
長崎氏は、日医が提示している保険料の上限を引き上げる案を紹介し、「現行制度では、高額所得者が優遇されている」と指摘した。
舛添厚労相は「高所得者であろうがなかろうが、病院にかかったときに受けるサービスと価格は診療報酬体系で決まっているから同じ」と述べ、「一定の上限を設けた方が国民的なコンセンサスを得られるのではないか」と反論した。
さらに「所得に対する累進的な課税があるので、そちらで高額所得者は負担している。保険料の比率を3にして、税の比率を7にする。そういう大きな仕組みの中でやる方が合理的だ」とした。
■周産期と救急の連携で厚労省の組織改編/舛添厚労相が指示
舛添要一厚生労働相は11月12日の厚生労働委員会で、周産期医療と救急医療の連携について「厚労省の中で医政局と雇用均等・児童家庭局で連携するよう、常に局長に指導しているが、それを超えて組織の改編を含めてやるべき。すでに指示を出しており、組織改編を含めて一元化できるようにやりたいと思っている」と述べた。阿部知子氏(社民)が「周産期医療と救急医療の連携がうまくいけば、都立墨東病院での妊婦死亡事例などは発生しないのでは」との質問に対し答えた。
■終末期相談支援料「国民全体に広げる」/舛添厚労相が従来の主張
舛添要一厚生労働相は11月12日の衆院厚生労働委員会で、7月から凍結している「後期高齢者終末期相談支援料」について「40歳でも末期がんで終末期の方もいる。国民(全体)に広げるためにあえて凍結したという意味もある」と述べ、今後全世代への拡大が望ましいとの見方を示した。西川京子氏(自民)の質問に対する答弁。
西川氏は後期高齢者医療制度について「制度の根本は間違っていないと思うが、一番は後期高齢者というネーミングの問題。感情論が先行してしまった」と指摘。現在、制度の見直しを進めている舛添厚労相に見解をただした。舛添厚労相は、高齢者の心情にそぐわない面があったことを反省した上で、(1)75歳で区別、(2)年金からの保険料特別徴収─の2点に特に問題があったとした。今後に向けては「世代間の費用負担の問題もある。さまざまな意見をもらいながら見直しを進めたい」と語った。
医師不足問題については西川氏が、医学部の定員増を打ち出した政府の姿勢を高く評価する一方、定員増では間に合わない短期的対策について厚労省の見解をただした。外口崇医政局長は「医師不足の背景には複合的な要因がある。短期、中期、長期の対策、偏在も含めてきめ細やかに対応していく」と答えた。
■看護師の公務災害認定「上告しない」/舛添厚労相、大阪高裁判決で明言
国立循環器病センターに勤務していた看護師の村上優子さん(当時25)が2001年3月にくも膜下出血で死亡したのは「公務災害」とした大阪高裁の控訴審判決を受け、舛添要一厚生労働相は11月13日の参院厚生労働委員会で「判決について関係省庁と協議した結果、上告しないことにする」と述べ、上告を断念する方針を明言した。小池晃氏(共産)の質問に答えた。
10月30日の高裁判決では、村上さんの時間外労働は「過労死認定基準」となる月80時間以上には達していないものの、50~60時間が常態化していた上、日勤終了から次の深夜勤まで5時間程度だった実態を踏まえ「慢性疲労とその蓄積、過度のストレスの持続」があったとして「公務災害」と認定した。日本看護協会は今回の判決に関し「国は大阪高裁の判決を真摯に受け止め、上訴を断念すべき」と求めていた。
■2200億円削減、あらためて「撤廃」で一致/自民・厚労関係幹部会
自民党の丹羽雄哉元総務会長(元厚相)や社会保障制度調査会の鈴木俊一会長ら厚生労働関係の幹部議員は11月13日、会合を開き、社会保障費の自然増2200億円削減問題や雇用保険の保険料率引き下げなどについて意見交換した。かねて求めている「2200億円削減の撤廃」については、あらためて出席議員の意見が「撤廃」で一致した。また、09年4月に控える介護報酬3.0%の引き上げに向けて、必要になる国庫負担分約600億円の財源確保も話題に上ったという。
■09年度税制改正へ本格議論スタート/自民・税調
自民党の税制調査会(津島雄二会長)は11月11日、総会を開き、2009年度税制改正に向けた議論を開始した。社会保障関係では消費税を含めた税制抜本改革のほか、09年度予算の概算要求基準で決められた「社会保障費2200億円削減」の削減額を引き下げるために充てる「たばこ税増税」などが焦点となる。この日の総会では、財務省や総務省などから財政状況や税収動向についてヒアリングした。その後、柳澤伯夫小委員長が年末の税制改正の検討項目案を説明。先月末にまとめた追加経済対策「生活対策」の実現に向けて、金融証券税制や中小企業対策税制、道路特定財源の一般財源化などについて議論する必要があるとした。
一方、舛添要一厚生労働相は同日の閣議後の会見で、社会保障費2200億円削減について「これまでも言っているように、たばこ税というような形で充填していくことはあり得る」とあらためて説明し、同日スタートした自民党税調での議論の進展に期待感を示した。
さらに「骨太の方針2008には、税制や予算編成過程で、歳入面で社会保障、医師不足の面倒をみることが特記されている。そういう方向で議論が進むことを期待している」と述べた。
一方、旧政管健保(現・協会けんぽ)に対する国庫補助を削減するため、健保組合などから2008年度単年度で約1000億円の負担を求める特例法案が、今臨時国会で成立しない見通しになったことについては「店ざらしになっている」との見方を示した上で、「例えば補正であるとか、いろんな手を使わないといけない」と述べ、補正予算で対応する考えを示唆した。
ただ、08年度の「2200億円削減」が未達成となることに関しては明言しなかった。
■周産期救急情報システムでモデル事業/厚労省、経産省と共同で
都内で発生した妊婦受け入れ拒否問題を受け、舛添要一厚生労働相は11月10日、二階俊博経済産業相と会談し、病床の空き状況などを把握する周産期救急情報システムに関するモデル事業を両省共同で実施する方針を決めた。
舛添厚労相は同日、記者団に対し「例えば国立病院などいくつかのモデル病院を取り上げ、早急に成果を挙げたい。情報ギャップが起こらないように、どこに何人医師がいて緊急の場合、誰が対応するかなどの情報伝達システムについて、経産省の持っている技術を現場に投入したい」と話した。
モデル事業の実施時期については「事務方にはすでに指示を出しているから、今日にでもやりたい」と説明。モデル事業は新たな周産期救急情報システムの構築から開始するとみられ、早ければ08年中にも着手する見込みだ。
二階経産相は今回のモデル事業について「少子化社会をどうするかと言いながら、お産がうまくできないようなら問題。ITに取り組む役所として、医療の専門的な面は厚労省に聞きながら、協力して結果を早く出したい」と話した。
■精神科救急と一般救急、連携を制度化へ/厚労省検討会・中間まとめ
厚生労働省の「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」(座長=樋口輝彦・国立精神・神経センター総長)は11月13日、中間まとめを来週中に公表することを了承し、精神障害者の地域生活への移行と支援に関する議論を終えた。中間まとめでは、精神科救急医療の充実を「個別に対応すべき事項」とし、精神科救急医療と一般救急医療の双方を必要とする患者の発生に備えて、両者の連携を制度上に位置付けることなどを盛り込んだ。
中間まとめの「個別に対応すべき事項の論点」では、「精神障害者への相談支援」「地域生活を支える福祉サービス」に加え「精神科救急医療の充実・精神保健指定医の確保」について記載した。
精神科救急医療の充実では、どの地域でも適切な精神科医療を受けられる体制の確保を図る観点から、都道府県が精神科救急医療体制の確保とそのモニタリングを実施することなどを制度化する方針を打ち出した。精神科救急医療と一般救急医療を必要とする患者に適切な医療を提供することを目的に、両者の連携を制度上も規定する。
措置診察などを行う精神保健指定医の確保にも言及し、積極的に取り組んでいる都道府県などの先例を参考に、輪番制などの体制整備を促すべきと指摘した。
精神保健指定医が、都道府県の精神医療体制の確保に協力することを法律で規定する方向性も打ち出した。措置診察などの公務員としての業務のほか、精神科救急医療への関与も求めていく。ただ、措置診察に全国一律の輪番制を導入することや、措置診察などへの参画を精神保健指定医の資格更新の要件とすることについては将来の検討課題とした。
論点には、入院中から退院までの支援の充実も盛り込んだ。精神障害者の地域生活への移行や、地域生活への支援などの施策を制度上に位置付け、精神保健医療福祉従事者が相互に連携・協力して支援する責務を明確化するとした。長期入院の精神障害者などは地域生活への移行に先立ち、入院中から試行的にグループホームなどでの生活体験や通所施設でのサービス利用ができる仕組みの構築も求めている。
中間まとめは2009年に予定する障害者自立支援法改正も見据え、これまでの検討内容をまとめた。今後、社会保障審議会障害者部会に報告し、2009年に予定する同法改正につなげていく。09年以降は今後の精神保健医療福祉施策の全体像の取りまとめに着手する予定だ。
■出産一時金の見直しで最低保障額を設定/厚労省方針
厚生労働省は、全国一律の出産育児一時金を地域の出産費用の実勢に応じた体系に改めるのに関連し、「最低保障額」を設定する方向で検討に入った。比較的出産費用が安い地方都市などで実勢に応じて一時金を引き下げると、産科医療機関の経営に影響が出かねないため、一定額を保障することが必要と判断した。具体的な体系は、年末の予算編成に向けて検討する。
一時金は現在35万円。しかし都市部などでは、これを上回る出産費用が掛かっている。このため舛添要一厚労相は国会質疑などで「20万円しか掛かっていないところ、東京のように50万円近く掛かっているところもある。地域の実勢を反映した形で給付する」などとして、実態に応じて金額を設定する考えを表明している。
■裁判員による介護サービス利用、環境整備を/厚労省が事務連絡
厚生労働省社会・援護局と老健局はこのほど、2009年5月に施行する裁判員制度で、介護を行っている人が裁判員や裁判員候補者になった際の対応について自治体に事務連絡した。裁判員制度の周知を行うとともに、介護を行っている裁判員らが介護サービスを円滑に利用できるための環境整備を要請している。
自宅で介護を行っている親族らが裁判員となっても、介護サービス利用に当たっての手続きに変更点はない。ただ、裁判への呼出状は6週間前に送付されるため、要介護認定を受けていない場合、裁判中に介護サービスを受けるには6週間以内に、要介護認定からケアプラン作成、介護事業者との契約までを済ませなければならない。
事務連絡では、裁判員らが円滑に介護サービスを利用できるようにするため、自治体から地方裁判所や裁判員らに対し、介護サービスや市町村の担当窓口に関する情報を提供するよう求めている。裁判員制度では、裁判員の辞退は原則として認められないが、介護を行わなければ日常生活を営むのに支障がある親族らは、個々のケースに応じて辞退の申し立てをすることができる。
■調剤報酬明細も社保カードの閲覧対象に検討/厚労省・間杉政策統括官
厚生労働省の間杉純政策統括官(社会保障担当)は11月12日の衆院厚生労働委員会で2011年度に導入予定の社会保障カードについて、薬局での調剤報酬の明細などさまざまな社会保障に関する情報を閲覧できるよう検討するとした。林潤氏(自民)の質問に答えた。
間杉政策統括官は、国民が社会保障カードを使って自らの年金記録やレセプト情報、特定健診情報などをいつでも自宅などからオンラインで見られる体制を整備するため、現在検討会で作業を進めていると報告した。その上で「国民全体の合意を前提としてさまざまな社会保障に関する情報を閲覧できる仕組みを検討する」と述べた。
■無保険児童の民主救済案「悪質な滞納を助長」/水田保険局長
民主党が近く国会に提出する「国保無保険児童救済法案」について、厚生労働省保険局の水田邦雄局長は「保険料納付にかかわらず被保険者証を交付することで悪質な滞納を助長する問題が出る」と述べ、法案に否定的な考えを示した。11月12日の衆院厚生労働委員会で桝屋敬悟氏(公明)の質問に答えた。
民主党の救済法案では、国保滞納世帯のうち18歳未満を一律に被保険者証返還の対象から除くとしている。水田局長は救済法案を実施した場合、子どもがいる滞納世帯に市町村職員が接触を図る機会が減少することや、保険料を支払っているほかの被保険者との公平性が損なわれるとした。
その上で「一方で医療を確保しながら、他方で収納の努力をするのが大切だ」と述べ、子どもに短期被保険者証を交付するなどきめ細やかな対応をしつつ、収納を呼び掛けていくのが大事だとした。
■在宅医療「社会的コストも踏まえた議論を」/佐藤医療課長
厚生労働省保険局医療課の佐藤敏信課長は11月14日、全国公私病院連盟が都内で開いた「国民の健康会議」のパネル討論で、今後の在宅医療の在り方について「日本は本当の意味でのコスト計算を十分にやってこなかったかもしれない」と述べ、今後は社会的コストを含めたエビデンスに基づいた議論を進めるべきだとの考えを示した。
佐藤課長は、これまでの厚労省の認識として「在宅と入院を比較した場合、一般的に在宅のほうが安いと言い続けてきたと思う。しかし、経済学的には正しくない」と指摘。従来は医療・介護費用を抑えることで「とりあえず厚労省の役割を果たしてきたと考えていた」とし、今後、在宅医療を進める場合には「例えば女性が仕事をやめて親の介護をしたり、住宅をバリアフリーにしたりする場合のコストなどを含めて、本当の意味での議論をしていく時代になった」と述べた。
地域的な特性によって医療が抱える課題が異なることを踏まえ、「全国に共通する医療提供のグランドデザインを描くことは難しい」として、都道府県や市町村などの役割の重要性を指摘した。ただ、自治体職員は医療関係以外にも幅広い分野の業務をこなしているため、「必ずしも複雑な医療制度に精通してもらえていない部分もある」ことを課題に挙げた。
■健康課題は医療費分析で/地域・職域連携関係者会議で上田健康局長
厚生労働省は11月10日、地域・職域連携推進事業関係者会議を開いた。上田博三健康局長はあいさつで、08年4月から特定健診・保健指導が始まったことなども踏まえ、生涯を通じた継続的な健康管理支援の施策の展開に向け、都道府県が総合調整機能を発揮することに期待感を示した。
厚労省は2005年度以降、各都道府県と2次医療圏ごとに「地域・職域連携推進協議会」を設置し、地域保健と職域保健での保健事業の共同実施や社会資源の有効活用を図る「地域・職域連携推進事業」を実施している。同日の会議では効果的な事業の進め方をテーマに全国の関係者らが意見交換を行った。
■削減が主眼の骨太とスタンス違う/国民会議の吉川座長、財政審で説明
財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会財政構造改革部会は11月11日の会合で、社会保障国民会議最終報告について吉川洋座長(東京大大学院教授)から説明を受け、その後ディスカッションした。吉川座長は「国民会議の最終報告は、社会保障のあるべき姿について議論したもの」と述べ、歳出歳入の観点から社会保障費の自然増をどの程度削減できるかを考えた「骨太の方針」とのスタンスの違いを説明した。
西室泰三会長は終了後の記者会見で、麻生太郎首相が中福祉・中負担の社会保障制度を目指していることへの見解を問われ、「(財政審の)委員のほとんどは賛成している」と回答。その上で「中福祉の内容については、国民会議がこうではないかと(最終報告を)出したのではないか」と一定の理解を示したものの、中負担については「政府税制調査会がまだ会合を開いていないので、負担の議論はできない」と述べた。
また、社会保障費2200億円削減のメニューとして有力視されている「雇用保険の国庫負担見直し」については、「一定程度の国の関与は必要」と従来の主張を繰り返した。
■18歳未満に保険証を交付/札幌市、保険料滞納世帯に
札幌市は11月11日、国民健康保険料を滞納したため医療費がいったん全額負担になる資格証明書の交付を受けている世帯の18歳未満の子どもに、12月1日から保険証を交付すると発表した。
経済的に自立していない子どもを"無保険"の状態にしないよう、厚生労働省が全国の自治体に配慮を求めていた。上田文雄市長は記者会見で「大人の事情と子どもの健康は別次元でとらえるべきだ」と話した。
災害などの特別な事情がなく保険料を1年以上滞納すると、保険証の代わりに資格証明書が交付される。札幌市によると、同市で資格証明書を持つのは約1万6000人で、うち18歳未満の子どもは約980人。【共同】
■無保険の子に保険証/堺市、476世帯対象
堺市は11月7日、保護者が国民健康保険料を滞納したため、保険給付が受けられなくなった"無保険"の中学生以下の子どもがいる世帯について、2カ月間有効な短期保険証を交付することを決めた。
市によると、対象は476世帯。短期保険証は12月から09年1月まで有効で、11月中に発送する方針。
市は「2カ月間で滞納者の実態を把握し、指導したい」としている。【共同】
■手挙げ否定の政府見解に「強い憤り」/オンライン請求で日医・中川常任理事
日本医師会の中川俊男常任理事は12日の定例会見で、診療報酬オンライン請求の「手挙げ方式」を否定し完全義務化を主張した政府答弁書に対する見解を示した。中川常任理事は日本歯科医師会、日本薬剤師会と共に三師会連名で先月、完全義務化の撤廃を求める共同声明を舛添要一厚生労働相や関係議員へ提出したと説明し、「こうした状況下で示された答弁書自体に、本会として強い憤りを禁じ得ない」と述べた。
その上で「社会保障国民会議で小泉政権以来の社会保障抑制策を大転換させたように、オンライン請求の完全義務化についても地域医療を守る観点から、政策の大転換を図ることを麻生政権に強く求める」と強調した。また、「日医はまだ、政府・与党と交渉を続けている。これ(答弁書)が最後の答えではないと思っている」と述べ、今後も完全義務化撤廃に向けた活動を粘り強く展開していく考えを示した。
■社会保障の充実と財源確保で決議/京都府医
京都府医師会(森洋一会長)はこのほど、定時代議員会を開き、「国民が安心して働き暮らせるための生涯を通じた社会保障の充実とその財源確保を求める」決議を採択した。構造改革の名の下に行われた社会保障費削減政策の結果、急性期や慢性期医療、後期高齢者医療制度など、さまざまな問題が生じていると指摘。医療崩壊を食い止め国民の健康を守るため、政府に対して抜本的政策転換を強く求めている。
決議では急性期医療について、医師の不足と偏在が限界点を超えていると強調。政府は医師不足対策を重要課題と位置付けているが、詳細はいまだに明らかにされていないと指摘している。
慢性期医療について、超高齢化社会の到来とともに重要性を増しているとの認識を表明。その上で「政府は、十分な受け皿整備を行わないまま療養病床の削減政策を打ち出し、介護給付費抑制策により深刻な従事者不足が生じた結果、医療・介護難民の発生が緊急の問題だ」としている。
後期高齢者医療制度については、高齢者の不満や批判に加え、財政悪化など制度設計のさまざまな不備により見直しを迫られる中、国民皆保険制度全体としても崩壊の危機に瀕しているとの窮状を訴えている。
介護編
■介護報酬3.0%増「給与改善に結び付ける」/舛添厚労相
舛添要一厚生労働相は11月12日の衆院厚生労働委員会で、介護報酬3.0%の引き上げについて「目的は介護従事者の処遇改善。きちんとそれに結び付くように施策を取りたい」との意気込みを示した。具体的には、給与水準の地域差を反映させる仕組みづくりなどのほか、介護従事者の給与改善についても事後的に検証し、確実に処遇改善につなげるとした。高橋千鶴子氏(共産)の質問に対する答弁。
高橋氏は、介護従事者の処遇改善のため、政府が追加経済対策で09年4月に介護報酬を引き上げるとしたことに対し「この点は前進したと受け止めている」と評価した。一方で、介護従事者の低賃金や高い離職率に影響を与えた過去2回の介護報酬マイナス改定を問題視。本来なら3.0%以上の引き上げ幅が必要ではないかとの見方を示した。
これに対し、厚労省の宮島俊彦老健局長は「2006年度の改定率マイナス2.4%のうち、1.9%分は入所者の食費居住費を自己負担化したこと。それを除くと全体の費用の部分のマイナス改定幅は0.5%となる」と解説。03年度(改定率マイナス2.3%)との合計ではマイナス2.8%の引き下げになるとして「今回の3.0%の引き上げは過去2回の合計を上回り、取り戻しているのではないか」と述べた。
また、高橋氏は、介護報酬を引き上げると保険料も連動して増加する仕組みに問題意識を表明した。舛添厚労相は「(現在、税金50%、保険料50%の負担割合だが)例えば税金の比率を60%、保険料40%とすることも検討課題としてあり得る」とした。
■経管栄養・喀痰吸引の実施に賛否/介護ビジョンで急浮上の「療養介護士」
経管栄養や喀痰吸引の医療行為を介護従事者ができる「療養介護士」(仮称)の創設を提案した11月12日の「安心と希望の介護ビジョン」会議。原則として認められていない医療行為を介護従事者が担うことに対し、構成員からは「唐突で違和感がある」「将来的な方向性としては必要」など賛否両論の声が上がった。
石川誠構成員(初台リハビリテーション病院理事長)は「吸引は医師の指示に基づき看護師が行ってきた経緯がある。成熟した技術が必要で、その分野だけを介護従事者が担うのは違和感がある」と疑問を投げ掛けた。石川構成員はさらに「リハビリテーション領域でも、理学療法士らは喀痰吸引の実施が法的に明記されていない。医療職でも吸引について共通認識ができていないのに、介護職に広げるのは急すぎる」と指摘した。また、新たな資格を設けることについても「資格制度ばかり増え、介護のヒエラルキーがつくられていく構造がみえる。唐突で違和感がある」と話した。
これに対し、鳥羽研二構成員(杏林大医学部教授)は「慢性期医療で吸引をすることは難しいことではない。医師・看護師でないとできないのはナンセンス。権限の移譲を盛り込むべきだ」と主張した。
前田座長は、喀痰吸引などは特殊な技術が必要とした上で「在宅療養では家族が吸引をしており、介護従事者が原則できないことは疑問。医療と介護の溝を埋めなければならない」と述べ、将来的な方向性として、介護職にまで実施を拡大する必要性があるとの見方を示した。
医療と介護の連携をめぐってはこのほか、鳥羽構成員が「要介護者は多くの合併症を持っている。高齢者が安心できる慢性期医療体制と救急搬送の確保を書き込まないでどこが安心のビジョンか。不安のビジョンに過ぎない」と話した。
■軽度要介護者らへの看護職の支援を提案/「居宅療養管理指導」で厚労省
厚生労働省は14日の社会保障審議会・介護給付費分科会に、「居宅療養管理指導」について、看護職員がケアマネジャーや医師と協働して療養上の支援を行う仕組みを導入する案を示した。居宅の療養者は軽度要介護(要支援)者が多いことを受け、早期の段階から生活環境や身体状況の変化について対応するのが目的だ。
居宅療養管理指導は通院が困難な療養者に対し、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士らが訪問して療養上の管理や指導を行う制度で、要介護2~5の中重度者が算定単位数の約8割を占める。居宅で療養している要介護(要支援)者の約7割は「要介護2」以下の軽度者だが、居宅療養管理指導や訪問看護は原則として「通院困難な人」を対象にするため、要介護度が低い人ほどこれらの利用率は低くなっている。厚労省は居宅での療養者の現状として「訪問看護事業所への利用者・家族の電話相談では、身体症状に関する相談のみでなく、『眠れない』といった不安に関する相談も見られる」としている。
これらを踏まえ、同日示された論点では、看護職員がケアマネジャーや医師と協働し、居宅での療養上の支援を行う仕組みの導入を提案。また、薬剤師による居宅療養管理指導について他職種との連携や診療報酬との整合性の観点から見直しを行うことや、居住系施設に入所する要介護(要支援)者に対する適切な評価などを挙げた。
■「小規模多機能」での医療対応を評価へ/介護給付費分科会
厚生労働省は1114日の社会保障審議会・介護給付費分科会に、小規模多機能型居宅介護について医療ニーズへの対応を評価する案を提示した。小規模多機能型居宅介護は高齢者の在宅生活を支える重要なサービスとされ、厚労省はその普及を次期介護報酬改定の基本的考え方に位置付けており、医療ニーズに対応することで利用者の拡大を図る。
同分科会が9月に行ったヒアリングでは、全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会が「医療連携体制加算」の導入を要望している。厚労省は一定の医療ニーズのある利用者の受け入れを可能とする必要があると判断した。このほか、適切なサービス提供を確保するための仕組みについても検討する。
小規模多機能型居宅介護は、要介護度が平均3.5程度の中重度の要介護者を念頭に導入された。「通い」を中心に「訪問」や「泊まり」を組み合わせ、24時間切れ目のないサービス提供で在宅生活が継続できるようにすることが狙い。ただ、利用者は2008年4月審査分で平均要介護度2.57と予想より軽いのが現状となっている。軽度の段階から利用することで、在宅生活を継続する可能性が高まるとの評価がある一方で、事業者からは中重度の利用者確保の難しさを訴える声も上がっているという。
■「短期入所療養介護」有床診の一般病床に拡大/厚労省、給付費分科会で提案
厚生労働省は11月14日、社会保障審議会・介護給付費分科会に、介護老人保健施設や病院・診療所の療養病床の空きベッドを利用して行われる「短期入所療養介護」を、有床診療所の一般病床でも実施できるようにする案を提示した。短期入所療養介護事業所の拡大などが目的で、現在の短期入所療養介護と同じ施設要件などを満たしていれば実施できるとする仕組みを示した。
厚労省が示した資料によると、療養病床を持つ医療施設のうち、短期入所療養介護を実施しているのは病院の34.5%、診療所の37.9%にとどまり、利用者数は伸びていない状況。厚労省研究班が2007年度に在宅要介護者について行った調査では「不足しているサービス」として、約3割が「療養病床以外の病床などで行われるショートステイ」を挙げていた。
このほか、同分科会が9月に実施した日本リハビリテーション病院・施設協会からのヒアリングで、短期入所の多くがレスパイト(介護に当たる家族の休息)目的である一方、通所リハビリなどでは2~3週間程度の短期入所による集中的なリハビリが効果を上げているとの指摘があった。
これらを踏まえ、厚労省は改定に当たっての基本的な考え方として、(1)短期入所療養介護事業所の拡大、(2)緊急時体制の見直し、(3)「泊まり」以外の機能の強化─を提示。急な医療行為にも対応可能で、患者の身近にある有床診療所の一般病床でも実施できるようにするべきとした。
また、緊急ニーズに対応する「緊急短期入所ネットワーク加算」の算定要件の緩和を図るほか、短期入所療養介護で日帰りケアを行った場合を評価する「特定短期入所療養介護」の報酬設定を1日当たりから時間別にするなどの方向性も示した。
■2号被保険者の軽減措置「財政難の保険者に限定」/介護報酬改定で厚労省
厚生労働省は11月14日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、次期介護報酬改定3.0%引き上げに伴う第2号被保険者の保険料軽減措置については、財政状況が悪い保険者のみに限定し、おおむね第2号被保険者の半数が対象になると説明した。
対馬忠明委員(健保連専務理事)は「第2号の保険料に不当に差をつけることのないようすべき」と要望。山本文男委員(全国町村会長)は「定額給付金を給付する一方で、介護保険料を上げるとはどういうことか。厚労省と日本の政府は別物なのか」と疑問を呈した。
京都編
■介護保険料の剰余金32億円に/京都市、06-08年度見通し
京都市が65歳以上の高齢者から徴収する介護保険料の剰余金が、2006年度から08年度まで3年間で32億円に達する見通しであることが11月16日、分かった。サービス利用が当初見込みを大幅に下回ったためだ。保険料は09年度に改定期を迎えるが、市は現行の月額4760円と同額程度に据え置くことを含め検討していく。
介護保険制度が始まった00年度から3年ごとの改定期別にみると、02年度までの第1期と05年度までの第2期の収支はいずれも赤字だった。
しかし、今期(06-08年度)は、実績に応じて事業者に支払った介護給付費が計画の2508億円を165億円も下回り、国や市などの公費や64歳以下の保険料を差し引いた剰余金が32億円に上った。
剰余金が生じた理由について、市は「介護サービスの利用実績が計画を下回ったため」と説明している。
サービス利用が低調だった背景には、国による給付費の抑制策がある。05年10月から介護施設の食費や居住費を全額自己負担とし、06年度から要介護度の低い人の家事援助の利用を制限した。
市は「過徴収」となった32億円を市の介護給付費準備基金に積み立てる方針だが、保険料負担の軽減のために基金を取り崩すかどうかは未定という。
ただ、政府与党は介護職員の待遇改善を図るため、09年度から介護報酬を引き上げる方針を固めている。給付費の増加も予想され、市でも今後保険料アップが議論される可能性がある。
市保険料は全国平均より月額約700円高く、介護サービスを受けている中京区の男性(71)が「保険料が高すぎる。少しでも抑えられるのなら抑えてほしい」と訴えるように、剰余金を使った保険料負担の軽減を求める声も出ている。
■8病院が累積欠損金/07年度府内公営企業決算
京都府は11月15日、2007年度の府内市町村(京都市除く)公営企業の決算状況を公表した。地方財政健全化法に基づく連結決算導入で10事業が赤字になったほか、公立病院では11病院中、8病院が累積欠損金を抱えるなど厳しい経営状況が続いている。
府内の市町村は、上下水道、ガス、病院などの公営企業計118事業を運営している。
地方財政健全化法に基づき公営企業を含めた連結決算導入に伴い、府が各公営事業の経営状況をまとめたところ、流動資産から流動負債を差し引くか、実質収支でみた赤字事業は10事業あった。
同法が定める資金不足比率の基準20%を超えた主な公営企業をみると、福知山市の駅周辺土地区画整理事業が、事業の長期化で売却予定地の地価下落で資金不足が発生。同市の青果などを扱う市場事業も、施設整備費の企業債償還を料金収入で賄えず、資金が不足している。
与謝野町では、地域開発事業で宅地造成を行ったが売れ残り、3200万円の資金が不足した。
病院事業でも、医師不足の影響で患者数が回復せず、経営環境が悪化し、福知山市民病院、舞鶴市民病院など八病院の累積欠損金は前年度より計約16億円増えた。
■11年度に黒字転換/亀岡市立病院が収支計画案
経営効率化を目指して「病院改革プラン」を策定している亀岡市立病院(同市篠町)は11月10日、開院以来赤字が続いている単年度収支を2011年度に黒字に転換する収支計画案を公表した。消化器科と外科を「目玉診療科」に据えて患者数と患者一人当たりの診療単価を増やし、開院8年目で800万円の単年度黒字を目指す。
この日開かれた「市立病院運営委員会議」で、病院改革プランの素案として示した。
計画案によると、07年度末で病床利用率75.4%、患者一人当たりの診療単価は入院が3万4500円、外来7200円だったが、改革プラン実施初年度の09年度には、それぞれ76.9%、3万4600円、7300円にすると設定。さらにプラン最終年度の11年度には、81.9%、3万6500円、7600円にするとした。
患者や診療単価の増加に向けた方策として、患者ニーズの把握▽広報活動の充実▽地域連携の強化-を列挙。今の経営形態を維持しながら目玉診療科を中心に患者と単価のアップを図り、単年度収支は07年度のマイナス1億2700万円を底に、09年度マイナス9400万円、11年度はプラス800万円を達成できるとした。プランは会議の意見を参考に、09年3月までにまとめる予定。
■待ち時間に不満、医療費の軽減要望/京都市立病院 市職労が調査
京都市職員労働組合病院支部が11月14日、市立病院の在り方などについての市民アンケート結果をまとめた。待ち時間への不満が目立ったほか、医療費を負担に感じる人が増えている傾向も分かった。
07年10月に市立病院周辺の右京区や中京区など5万世帯にアンケート用紙を送り、約800世帯から回答があった。
市立病院を受診したことがあるとの回答は63%で、うち26.8%が「再び受診しようと思わない」と回答。理由として約4割が待ち時間の長さをあげた。
医療に関する要望では、「医療費・保険料負担の軽減」が2000年の調査開始以来初めて半数を超えた。
同支部では「待ち時間対策として医師などの増員を市や国に求めていく」としている。
■大戸川ダム中止要望/4知事、淀川水系整備で国に反対
淀川水系4ダムを盛り込んだ国土交通省近畿地方整備局の河川整備計画案に対し、京都府の山田啓二、滋賀県の嘉田由紀子、大阪府の橋下徹の3知事は11月11日、和歌山市内で記者会見し、大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について「河川整備計画に位置づける必要はない」と、国に事実上の「建設中止」を求め、計画反対の共同意見を発表した。3知事は「現実の立場から一刻も早く安全を確保するアプローチを取った」と強調した。
共同意見には、三重県の野呂昭彦知事も名を連ねた。河川法に基づく知事意見で、府県を超えて流域の知事が国のダム計画に反対するのは初めて。法的拘束力はないが、多額の費用負担を担う地元府県が反対したことで、40年来の同ダム建設は、困難な見通しとなった。
大戸川ダム計画に伴う県道の付け替えなど周辺事業は、3府県が費用負担することを前提に、国に継続を求めた。地元の嘉田知事は「(下流の)両知事に地域生活に多大な影響が生じていることを考慮していただいた」と述べた。
天ケ瀬ダム(宇治市)再開発は、琵琶湖の洪水被害の軽減に役立つとし、宇治川下流の堤防強化などを条件に同意した。具体的計画が示されていない丹生ダム(滋賀県余呉町)は「意見を述べることが不可能」として留保した。
●画期的な府県合意
【解説】 京都、滋賀、大阪の3府県知事が大戸川ダム中止で合意に至った背景には、まず計画を重視する国交省と、現実の課題に直面している府県知事の「安全に対するアプローチの違い」(山田啓二京都府知事)がある。
近畿地方整備局の説明では、大戸川ダムを整備すれば、淀川の安全度を落とすことなく桂川改修に着手でき、大戸川の治水安全度も一気に上がるとしていた。だがダムは整備に多くの時間と費用がかかる。「ダムができるまで何十年も桂川の改修などを待たなくてはいけない」(山田知事)という国の計画ではなく、危険な所から優先的に手当てする現実的な方策を各知事は選択したのだ。
合意文書では、上中流を整備する上で、「下流の治水レベルを考慮しつつ」という文言が随所に見える。これまで国の役割だった上下流バランスの確保を、3府県知事が上下流の対立を乗り越えて行ったことに、今回の合意は画期的意味がある。
一方、大戸川ダム予定地周辺の付け替え道路整備や、ダム以外の多角的な治水策の模索など、各知事は新たな課題を背負ったことも事実だ。中央主権型から、地方分権型の地域整備へ。総合行政を担う各知事の力量がこれから問われる。
調査・データ編
■医科のレセコン未使用、1万2726診療所/政府答弁書
08年5月の診療報酬請求分で、レセプトコンピューターを使用していない医科診療所は1万2726施設に上ることが、11月11日に政府が閣議決定した答弁書で分かった。
答弁書は、社会保険診療報酬支払基金による2008年5月分の集計結果を基にレセコンの使用状況を記載した。医科については、レセコンを使用している病院が8708施設となっているのに対し、使用していない病院は123施設だった。診療所では7万5902施設がレセコンを使用していたが、使用していない施設は1万2726施設に上った。
歯科では、レセコンを使用している病院は1326施設、診療所は5万5360施設なのに対し、使用していない病院は332施設、診療所は1万4146施設だった。
一方、薬局では、レセコンを使用しているのは4万7060施設、未使用は4558施設だった。
辻泰弘氏(民主)の質問主意書に答えた。
■心臓移植、11年間で59件/舛添厚労相、参院厚労委で報告
舛添要一厚生労働相は11月11日の参院厚生労働委員会で臓器移植の実施状況を報告した。臓器移植法が施行された1997年10月から08年9月末までの11年間の臓器移植実施数は、脳死下と心臓停止下での提供を合わせ、心臓59件(提供者数59人)、肺52件(45人)、肝臓57件(53人)、腎臓1787件(971人)、膵臓53件(53人)、小腸4件(4人)、角膜(08年8月末まで)1万6807件(1万343人)だった。同法に基づき、計76人が脳死判定を受けていた。
報告によると、08年9月末までの全国の移植希望登録者数は、心臓114人、肺113人、心肺同時4人、肝臓220人、腎臓1万1563人、肝腎同時3人、膵臓27人、膵腎同時124人、小腸1人で、眼球(角膜)は08年8月末までに3066人となっている。
■精神保健福祉センターへの相談「社会復帰」が最多/厚労省調査
厚生労働省は11月13日、精神保健福祉相談に関する調査結果を公表した。08年9月下旬の1週間に受けた相談内容について、精神保健福祉センター54カ所、保健所271カ所、市町村23カ所から回収した資料をまとめた。相談内容については、精神保健福祉センターが来所・訪問で対応した件数のうち、「社会復帰」の割合が35.4%で最も多く、次いで「日常生活支援」24.6%、「疾患の診断や対応」23.4%などとなっている。「ひきこもり」は19.5%だった。
保健所が受けた相談内容では「日常生活支援」が33.9%で最も多い。次いで「疾患の診断や対応」23.7%、「医療の継続・中断」22.6%など医療関連の相談が多く、「社会復帰」21.0%、「地域・近隣での他害・迷惑行為」12.4%、「家庭内暴力」10.1%など複雑・困難事例も多かった。
市町村では「日常生活支援」の割合が62.4%と顕著に高かった。「社会復帰」に関する相談も34.6%で多かった。一方で「疾患の診断や対応」11.8%、「医療の継続・中断」11.4%など医療に関連する項目もみられた。
調査は厚労省の「精神障害者の円滑な地域移行のための地域体制整備に関する調査研究事業」の一環で、岡部英男・全国保健所長会理事を主任研究員として実施した。厚労省は速報値として同日の「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」に資料として提示した。
■訪問リハ、医療機関が広く利用/理学療法士協会らが調査
日本理学療法士協会と日本作業療法士協会は11月12日、今春実施した訪問リハビリテーション実態調査の結果を報告した。調査結果は、独立型の訪問リハビリテーション提供機関は地域の医療機関から広く利用者の紹介を受けていると結論付けている。両協会は、同日開かれた公明党の厚生労働部会と介護保険制度改革委員会の合同会議で説明した。
両協会は、訪問看護ステーションからの理学療法士と作業療法士の訪問状況について、28法人を対象に調査。うち回答があったのは23法人(有効回答率82.14%)だった。調査対象月は2008年4月。
指示書を交付した医療機関は2446施設で、病院が34.59%、診療所が65.41%。これまで病院は療法士の雇用が多いと考えられていたが、両協会は、相当数の利用者を訪問リハビリテーション提供機関に紹介していることが分かったとしている。訪問リハビリテーションの利用者総数は4855人。1医療機関当たりの利用者数は1.98人だった。
指示書を交付した医師は3171人で、医師1人当たりの利用者数は1.53人だった。
■2次医療圏の8割で「病院医師が不足」と認識/日医・医師確保調査
日本医師会の内田健夫常任理事は11月12日の定例会見で、都道府県医師会や病院を対象に実施した「医師確保のための実態調査」の中間速報を発表した。都道府県医師会に対する調査からは、8割の2次医療圏で病院医師が不足していると認識されていることが分かった。また、病院への調査からは、約半数の大学病院で医師が増加したものの、依然として不足と感じている病院長が6割近くあり、研修医以外の応募の減少や指導医の負担増、勤務医の活力低下などの問題を抱えている実態が明らかになった。内田常任理事は12月初旬にも最終報告を取りまとめると説明。「診療科別、地域別の問題点の詳細分析を行い、優先的・重点的に医師確保策を進めるべき分野を検討する」と述べた。
都道府県医師会調査の有効回答数は42医師会(89.4%)。2次医療圏別の医師の偏在・不足についての認識、医師確保のための対策、医学部定員数を過去最大化することへの意見について調査した。
中間速報では、病院医師が「不足」していると認識されている2次医療圏は84.2%で、診療所医師が「不足」していると認識されている2次医療圏は39.3%だった。また、医師確保のための施策として、39医師会が「小児救急電話相談事業(#8000)を実施している」と回答。うち61.5%が「効果があった」としている。
一方、病院調査の有効回答率は48.2%で、内訳は2008年度臨床研修プログラム参加病院(全数)の53.3%、一般病院(2分の1抽出)の43.4%、精神科病院(5分の1抽出)の53.7%。医師数とその変化、医師不足による影響、医師の過不足感(病院長の回答)、臨床研修制度導入前後の変化について調べた。
5年前と比べた医師数全体の変化では、39.6%が「減少」したと答えた。また、大学や公的病院から供給を受けている医師数が「いなくなった、減少した」病院が52.3%となった。医師が「不足」していると考える病院長は59.5%だった。
新医師臨床研修制度施行後、医師の離職が「増加」した病院は32.4%。また、74.3%が指導医の負担が「増加した」と回答した。
環境編
■排出量は過去最悪と環境省/07年度国内温室効果ガス
環境省は11月12日、2007年度の国内の温室効果ガス排出量(速報値)は二酸化炭素(CO2)換算で約13億7100万トンで、京都議定書の基準年の1990年度を8.7%上回り、過去最大だったと正式発表した。
07年7月の新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の停止が産業や業務、家庭などの部門の排出増に大きく影響し、化石燃料の燃焼によるエネルギー起源のCO2は06年度から2.7%増えた。
環境省によると、同原発停止などの影響がなく、単位発電量当たりのCO2排出量が06年度と同じと仮定すると、07年度のエネルギー起源CO2は0.3%の減少。原発に大きく依存する日本の地球温暖化対策のもろさが露呈した。
原発停止のほか、渇水で水力発電の発電量が減り、代わりにCO2排出が多い火力発電所の稼働を増やしたため、全体の排出量は06年度比2.3%増。部門別では家庭部門が同8.4%増、産業部門は同3.6%増。家庭部門は、夏の冷房利用の増加も影響した。【共同】
■5党「温室ガス大幅削減が必要」/自民は中期目標数値示さず
温室効果ガスの排出削減目標を法律で定めるよう求めている環境保護団体などでつくる「MAKE the RULE(メイク・ザ・ルール)キャンペーン」は11月13日、主要政党や次期衆院選立候補予定者に対するアンケート結果を公表した。
京都議定書に続く地球温暖化対策の国際枠組みと密接に関連する削減の中期目標や、その後の長期目標について、民主、公明、共産、社民、新党日本の五党は「2020年に1990年比25-40%削減、50年に同80-95%削減の幅で目標を設定すべき」と、大幅削減の必要性を回答。
一方、自民党は50年の削減目標は60-80%としたが、中期については「世界全体の排出量を今後10-20年で頭打ちにし、50年には半減する経路として十分なレベル」と、数値を示さなかった。
8政党と現職国会議員、立候補予定の新人ら計803人が対象で、政党は新党大地以外が回答。議員と予定者の回答率は39%にとどまった。
斉藤鉄夫環境相や一部自民党議員も含む回答者の98%は、20年に25-40%減など大幅削減が必要だとした。麻生太郎首相から回答はなかったという。【共同】
■公正な原発審査へ懇談会が提言/電力会社との関係申告など
国の原子力安全委員会で原発の安全審査をする専門家が電力会社など申請者と何らかの関係がある場合、自己申告してもらって安全委がチェックするなどとする提言を、安全委の懇談会が11月15日までにまとめた。
公正、中立な審査のためだが、除外範囲が広すぎると優れた専門家が参加できなくなるとして全面的に排除はしない。審査過程の公開によって、電力会社側に偏った判断をするなどの問題が起きないようにするべきだとしており、その実効性が課題になりそうだ。
非公開で詳細な審査をする下部組織の記録はこれまで、誰がどんな発言をしたか分からない個条書きの「議事概要」しかなかったが、情報公開を進めるため、詳しく分かる「議事録」とし、発言者名を記すよう求めた。
安全委は提言を基に、08年度中に審査をする人の選任基準を定める。
提言では、申請者との関係によって専門家の意見が申請者側に偏り、審査に影響する恐れが特に強いときは審査への参加を認めないとした。影響が及ぶ可能性がある場合は、どんな関係かの申告内容から適任かどうかを判断する。【共同】
■原発事故防止に専門チーム/情報分析や改善策指導
国内や海外の原発のトラブル情報をいち早く集め、各地の原発の安全対策につなげて重大事故を防ぐため、経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全基盤機構(東京)は11月16日までに、情報の収集や分析に当たる専門チームを09年4月にも合同で設置することを決めた。
保安院はチームに数人を充てる予定で、分析能力を高めて作業を迅速化し、原発の運転上の注意や設計変更などの改善策を電力会社に指導、助言する。
保安院は国内外の情報収集のほか、国内の原発に配置した検査官が巡視や検査で気付いたことを入力するデータベースを、数年前から運用。情報はトラブル対応の担当課や定期検査の担当課などがそれぞれ分析しており、幅広く詳細な解析は難しいという。
07年以降、関西電力美浜原発、日本原子力発電敦賀原発(いずれも福井県)など国内の加圧水型炉で、蒸気発生器入り口の配管の溶接部に応力腐食割れとみられる傷が相次いで見つかったが、スウェーデンと米国で2000年、原子炉容器の配管溶接部で同様のひび割れが報告されていた。
保安院は「こうしたケースでは、もっと早く国内の対策に反映できたかもしれない。トラブルの兆候を早くつかみたい」としている。【共同】
■太陽光発電で政府が行動計画/駅や学校への導入を促進
政府は11月11日、太陽光発電の導入促進に向けた行動計画を発表した。大容量の電力が必要な鉄道の駅、空港などの公的施設や小中学校をはじめとする教育機関への太陽光発電の導入拡大が柱。温室効果ガス削減と国産エネルギーの安定確保に向けた取り組みを加速させるのが狙いだ。
具体的取り組みとして、高速道路のパーキングエリア、鉄道の駅、空港施設などの公的施設に太陽光発電システムを設置する際の補助金の割合を、現在の3分の1から2分の1に引き上げる。また、全国の公立小中学校に、耐震化と合わせて太陽光発電システムを設置するよう働き掛け、コスト削減と環境教育の両立を図る。
このほか、大企業が省エネを支援する見返りに二酸化炭素(CO2)の排出枠を得る「国内クレジット制度」の対象に公的施設や学校なども加え、大企業のCO2削減の自主行動計画に反映させたり、電力会社が一般家庭の屋根を借りて太陽光発電システムを設置し、グリーン電力を供給する新たなビジネスを支援することなども検討する。【共同】
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