【緊急アンケート結果を発表/京都府保険医協会(2010年1月20日まとめ)】
「長期入院患者」に対する減額規定の対象拡大に関する緊急アンケート結果
「後期高齢者」に対して行った「差別」の対象拡大は許さない!
「中央社会保険医療協議会」において、次回診療報酬改定に向けた議論が活発に行われ、2010年1月15日には「診療報酬改定に係る検討状況について」と題した改定の「現時点の骨子」が示された。その中でも触れられているように、これまで後期高齢者のみを対象に行われてきた「長期入院患者」に対する入院基本料の減額規定を、原則として全年齢を対象にしてはどうかという内容が盛り込まれている。これは高齢者に対する「差別」と、社会的な批判を受けたことに対して、厚生労働省は、減額規定を廃止し「差別」を解消するのではなく、この批判を逆手に取り、その対象を全年齢に拡大し「差別」対象患者を増やすことで対応しようとするものである。これでは本末転倒である。
そこで、京都府保険医協会では、減額規定が適用される会員病院に対して、今回の案に対する意見集約を行うため、緊急にアンケート調査を行った。
対象は、京都府内で減額規定が適用される一般病棟・特定機能病院及び障害者施設等入院基本料を算定する会員病院(136医療機関)。アンケートは2010年1月8日付で送付。1月19日までに58医療機関より回答があった。回収率は43%。
1.後期高齢者に対する「長期入院患者」減額規定は廃止すべき
現行制度で行われている、後期高齢者に対する「長期入院患者」減額規定について、廃止すべきと考えるか、残すべきと考えるかをはじめに尋ねた。
「廃止すべき」と回答した医療機関が圧倒的に多く97%(56医療機関)。「残すべき」と回答した医療機関はわずか3%(2医療機関)のみであった。圧倒的多数が「廃止すべき」と考えていることが分かる。(図表1)

2.減額規定の対象拡大には反対
次に「長期入院患者」に対する減額規定の対象を、後期高齢者以外にも拡大しようとしていることについて、その是非を尋ねた。
「反対」と回答した医療機関は98%(57医療機関)にのぼった。「賛成」と回答した医療機関は2%(1医療機関)のみであった。減額規定の対象拡大について、異を唱えているという結果が出た。(図表2)これは、後期高齢者に限定されていた「長期入院患者」に対する減額規定を、減額規定の廃止ではなく、その対象を拡大することで「差別」感をなくそうという、議論のすり替えが行われていることに対する批判である。

3.患者の追い出しにつながる恐れも
「反対」と回答した医療機関に対して、なぜ「反対」なのかを尋ねた(複数回答可)。
最も多かった回答は「患者の追い出しにつながる危険性がある」である(81%、46医療機関)。患者を追い出さずに病院経営を維持するのか、それとも病院を潰してしまうのか、我慢比べの状態であり、病院側の我慢にも限界があるという気持ちの表れではないか。
その回答数に匹敵する理由として74%(42医療機関)が挙げたのが「そもそもなぜ減額されるのかが分からない」である。説明のつかない差別的な減額規定が存在すること自体が不可思議であるにもかかわらず、その対象をわざわざ拡大しようというのだから、どうしてそのような方針が打ち出せるのか、正直呆れてしまうというのが本音であろう。
「単に不合理の拡大だから」という理由も53%(30医療機関)が挙げ、「さらに経営が圧迫されるから」という理由を上げた医療機関も半数に達した(51%、29医療機関)。全く納得できないという意思の表れであろう。(図表3)

4.長期入院により入院料が減額されることにそもそも納得いかない
続いて、そもそも長期に入院した場合に、入院料の本体・基本部分が減額されることについては、納得がいくかどうかを尋ねた。
「納得いかない」と回答した医療機関が95%(55医療機関)で圧倒的多数を占め、「納得する」と回答した医療機関は5%(3医療機関)にとどまった。
やはり、医療費の抑制以外に、減額される根拠を見出せない以上は、当然のことながら納得できるはずもない。(図表4)

5.自由意見
最後に「長期入院患者」の減額規定の対象拡大が示されていることに対して、自由に意見を書いてもらった。主な意見は次のとおりである。
・長期入院患者の受け皿の整備なしに、単に医療機関に対してのみペナルティを与えることでは問題は解決するはずもない。在宅も非現実的であり、超高齢化を迎えるにあたり、抜本的な対策が必要である。
・除外対象の患者さんでも入院が必要な方は多くいることを理解してほしい。
・医療費削減ありきの議論の中、長期入院患者の減額が取りざたされるが、基本は社会保障の充実であり、このようなことが議論されている自体疑問に思われる。
・特に定められる場合を除く状態となった患者が、退院に向け在宅環境整備や介護施設入所待機期間中も入院基本料の減額及び包括請求となることは納得できるものではない。
・長期入院であることをもって、減額することは不合理である。入院基本料の構成項目についての一方的解釈の押しつけである。
・実際の医療の現場の状況を理解していれば、このような議論が行われることはない筈である。
・そもそも長期という判定と治療期間とどう結び付けるか不明。患者さんの本来の立場でどこまで配慮されているのか、医師の考えも明らかにしてほしい。
・減額する根拠がなく、医療費削減目的以外何ものでもない。
・後期高齢者と医療機関に対するいじめと考える。
・社会的入院も医療機関に丸投げの現状で、それに対するコストを認めないのは勝手すぎる。保険者側にも長期化防止を図る義務があるのではないか。
・在宅医療の制度が充実しているとはいえない状況下で、長期入院を必要とする患者に追い打ちをかける政策ばかり出てくるのは如何なものかと考える。
・退院できる患者は、住宅環境等整っている場合が多いが、高齢者の独居老人等住宅環境、地域連携等整っていなければ、大げさに言うと、死なすために退院を進めているように思えるときがある。
・一律に入院日数をもって入院基本料減額の対象とするのは、平均在日数でのしばりと合い重なって、二重課税のように思われる。
・現行でも長期入院患者難民が存在しているのに、さらに拡大すれば難民の増大と必ずなると思われる。
・長期入院を要する患者にとって、経済的負担が最も危惧されるところである。健康的な社会生活を送るためには、患者への経済的サポート、病院の収益を勘案した行政が不可欠と思料する。
・現に採算割れ入院患者を背負っており、小病院が閉鎖に追い込まれることとなる。
・医療が必要とされる患者とその受皿をどう考えるのかを医療機関と国民両方に納得できる説明をしてからにしてほしい。
〈結論〉根拠なき「長期入院患者」減額規定の対象拡大には全く納得ができない
2010年診療報酬改定に係る「現時点の骨子」には、後期高齢者のみを対象に行われてきた「長期入院患者」に対する入院基本料の減額規定を、原則として全年齢を対象にしてはどうかという内容が盛り込まれているが、そもそも後期高齢者のみだったとしても「廃止すべき」と考える内容を、対象年齢を拡大することには当然のことながら「反対」というのが、病院側の意見である。それは、減額に対する根拠が、医療費抑制以外に何も見当たらないからである。病院側が我慢できる体力にも限界があるということ、また「長期入院患者」が安心して療養できる基盤整備を果たさないまま、そのしわ寄せを、病院や患者にばかり押し付けることには限界があるということが、本アンケートに対する回答では訴えられていた。厚生労働省は、「長期入院患者」が減額される取り扱いの対象拡大を企図する「根拠」を国民にはっきり示すべきである。そして、その後患者がどのような療養を受けられるのか、説明する責任がある。残念ながら、すべての患者が介護保険施設、在宅で安心して療養生活を送る環境にあるとは言えない中、「長期入院患者」が減額される取り扱いの対象を拡大することは、医療難民の増加の原因となりかねない。政府、厚生労働省は、2010年度改定において「長期入院患者」に対する減額を中止することが求められる。
tel: 075-311-8888 fax: 075-321-0056 e-mail: info@hokeni.jp









