主張/ 「健やか長寿の京都ビジョン」 -医療費削減から始まる-
日本は今世紀半ばには3人に1人が65歳以上になるという「超高齢化社会」を迎える。
高齢者の医療費の伸びを抑制するための施策の基本をなすのは1985年の政府の医療法改正であり、06年の医療制度改革関連法によって強化された。07年「全国医療費適正化計画」が策定され、京都府は「健康長寿日本一」を目指して、本年3月末「健やか長寿の京都ビジョン(京都府保健医療計画)」を打ち出した。1人ひとりの自己責任に基づく健康増進をサポートする地方自治体施策を展開させようというものである。
例えば、京都府においても死亡原因の第1位はがんであり、毎年7000人が死亡している。この計画ではまず、個人の努力による予防・早期発見、生活習慣の改善・啓発に努めることとされる。対策として、がん診療連携拠点病院を各医療圏域毎に明記して公表する。その地域において、その疾患に対する連携を求められるのは、そこに明記された医療機関だけであり、それ以外の医療機関は必要ない、つまり余分な医療機関という評価を受け、どこでも誰でもいつでもというフリーアクセスを制限、医療費の抑制を狙うものだ。
「懸命に生きた罪か人間の枠はずされし後期高齢者」朝日新聞の朝日歌壇に入選歌として掲載された悲痛な後期高齢者の声である。4月から実施された保険料の年金天引きという呵責のないやり方は、想像力の乏しい厚労省官僚の人間性の欠如をうかがわせる。乏しい年金、高齢者の一人暮らし世帯の増加(15年には570万世帯)、そこに要介護状態の発生から生活の破綻が待っている。今、高齢者の格差は広がり、下流ではない下層、つまりあってはならない「貧困」が起こっている。もはや対岸の火事ではない。
英エコノミストの記者は「政府とは問題解決のためにあるはずなのに、日本では問題を生むためにあるようだ」と評している。さらに、政策の過ちからもたらされた深刻な医師不足は、医療過誤、救急体制の不備、医師の過労死等の要因となっている。わが国の従事医師数は毎年3200人~3500人ずつ増えて26・4万人、OECD諸国の人口1000対医師数は日本2・0であり、最多はギリシャの4・9、最小のトルコの1・5よりは高いが、アメリカは2・4であり、日本は少ないグループに属する(05年)。総医療費の対GDP比は8・0%で22位、1位のアメリカのGDP比は15・3%である。04年時点で勤務医数が25万7000人で必要数より9000人少ない。先般、町村信孝官房長官は高齢化による自然増が続く社会保障費について「削るのは容易でない」が5年間で1兆1000億円圧縮する政府方針の見直しもあり得るとの認識を示した。
最後に、社会民主主義的福祉国家であるフィンランドと家族主義的福祉国家である日本とでは直ちに比較はできないが、小国ながらフィンランドは経済成長を続け、合計特殊出産率も日本の1・32を大きく上回る1・84であり、女性の社会進出も進み、高齢化社会としては福祉の充実が見られ人間の豊かさが評価されている。北欧の高福祉・高負担は政府への信頼に基づく。日本の低福祉・低負担には、目に余る無駄遣いの多い政府への不信感が根強いことから、増税で打開するのは難事業であろう。
【京都保険医新聞_第2637・2638号_2008年5月5・12日1面】
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