理事提言/中国産が危険なのか─食とWTO─
政策部会 飯田 哲夫
食を取り巻く環境-自然、供給、貿易、行政、情報、文化などは、近年大きく変貌したが、ここでは供給システム、特にその国際化にかかわる問題を取り上げてみたい。
ファストフード、インスタント・冷凍・調理加工食品の多用化は、同時に食供給の大規模化、工業化、国際化を進行させた(正しくは、市場主義グローバル化にもとづく後者が、前者を作り出し推進したのである)。これは長距離輸送、長期保存などによるエネルギー浪費などとともに、食糧自給率の低下を引き起こし、何よりも安全性に問題をもたらしている。
冷戦構造終焉は、商品、金融はもとより、医療など社会保障、安全、文化をも、利潤の前に組み伏せようとするグローバリズムが世界を覆い、国家間と国内の格差拡大の始まりでもあった。そしてこのグローバリズムのもとでの世界貿易を推進するために設けられたのが世界貿易機関(WTO)である。ではWTOは食の安全性にどのような影響を及ぼしているのであろうか。
WTO加盟国は、WTOの様々な委員会が決定した協定「全て」を、国内法に「優先して」守る義務を負う。このWTO協定の中心をなすものが「整合化・ハーモニーゼーション」と呼ばれるものである。「整合化」とは、食に関していえば、各国で設けていた検疫、添加物・農薬残留など、食品にかかわる基準・規格、法制度・行政施策をWTO基準に統一することを意味し、貿易相手国以上に自国基準を厳しくすることは禁じられる。そしてこれは国内の全て、地方、厳密には生協基準すら拘束する。
これらの協定を決定する委員会の構成は、政府代表と穀物・食品多国籍企業を代表するメンバーからなり、消費者代表はほんの一握りにすぎない。何が起こったのか、いうまでもあるまい。利潤追求至上のための、食の生産、提供にかかわる規制・基準の緩和であり、それによる目を覆いたくなるような世界と日本における安全性の後退、荒廃である。最後に付け加えると、厚労省はWTO基準で厳しいものは採用を見合わせ、規制緩和になるものは速やかに採用する傾向にある。(具体的な問題点についてはいずれコラム「環境を考える」で取り上げるつもりである)
【京都保険医新聞_第2634号_2008年4月14日4面】
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