主張/予防方策が求められる転倒と転倒傷害
京都府保険医協会は、3月8日(土)に「転倒・転倒傷害の防止困難を乗り越えるために」をテーマに07年度医療安全シンポジウムを開催する。
関連する訴訟事例をあげる。(1)01年5月7日、72歳女性は多発性脳梗塞で某病院に入院した。左片麻痺(左下肢筋力4)があり、トイレには付き添いが必要と判断された。夜間、点滴棒を支えに1人でトイレに行くのを発見され、看護師に必ずナースコールするよう、再度説明・指示された。翌朝6時頃、看護師はトイレに同行したが、「一人で帰れるから大丈夫」とのことで、帰室時は同行せず、半時間後に訪床しベッド脇で倒れているのを発見した。急性硬膜下血腫で緊急手術されたが、12日死亡した。第一審は、帰室時不同行の過失はあるが転倒への因果関係を認めず、請求棄却した。第二審では、トイレから一人で帰室することを看護師が容認したことになるとして、帰室後再び一人でトイレに行こうと転倒した可能性から因果関係を認め、本人8割と過失相殺し、619万円の支払いを命じた(東京高判平15・9・29)。
(2)02年7月1日、要介護2の85歳女性は、デイサービスで送迎バスの待機中にトイレに行こうとソファから杖を突いて立ち上がろうとしたが、前かがみになりそうになった。危険を感じた職員は「ご一緒しましょう」と声掛けし、右手で杖を突き歩行する女性の左側直近に付き添ったが、歩行は安定していた。職員がトイレの戸を開け、女性が中に入り「一人で大丈夫」と同道を断り内側から戸を閉めた。職員は入室を迷い待機した。トイレは入り口から1・8メートル、幅1・6メートルと広く、手すりはなく、床の水濡れはなかった。便器の方に2~3歩進み、杖がすべり転倒した。右大腿骨頸部内側骨折で人工骨頭置換術を受けた。裁判所は、転倒防止などへの安全配慮義務があり、女性の歩行能力とトイレの広さから便器までの移動時に転倒の可能性は十分予見でき、本人が拒絶したとしても直ちに一人で歩かせるのではなく、説得して、便器まで歩行介助する義務があったとして、本人3割と過失相殺し開設者に1253万円の支払いを命じた(横浜地判平17・3・22)。
「一人で大丈夫」との意欲が逆に危険を喚起するジレンマとなっている。転倒・転倒傷害の予防困難を乗り越えられる方策が求められる。
シンポジウムへの参加をぜひお勧めする。
【京都保険医新聞_第2628号_2008年3月3日1面】
tel: 075-311-8888 fax: 075-321-0056 e-mail: info@hokeni.jp









