主張/医療安全管理体制の確認を今一度協会の医師賠償責任保険処理室会(処理室会)における06年度(06年6月~07年5月)の紛争発生報告書の提出件数は82件であり、若干ではあるが3年連続で減少傾向となっている。しかし、証拠保全や法的措置を取るケースも残念ながら後をたたず、全国的に見ても訴訟件数は増加傾向にある。 医療機関における治療行為は身体への侵襲を伴うが、医療の専門職たる医師と患者との間には契約があることから、法律上正当行為とされている。診療契約は患者の病的症状を医学的に解明し、その症状にしたがって治療行為を施すことを内容とする準委任契約(福島地裁会津若松支部判決、昭和46・7・7)で、治癒にむけて最善をつくす手段債務という表現も使われる。従って、法律上は治すことまでは求められてはいないが、医師は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意義務(民法第644条)をもって専門の知識・技能を発揮すべき債務を負っている。実際、医療を実践するにあたっては、患者に関する医療情報が十分に説明された上での承諾(インフォームド・コンセント)が前提となる。 処理室会の目的は、事故原因の調査、損害賠償金等の支払いの妥当性等について審議し、医事紛争を円満に、かつ迅速に解決することにある。この会でのキーワードは上述のインフォームド・コンセント、注意義務である。インフォームド・コンセントは「ムンテラ」と混同されていることが時に見られるが、患者が主体に実施される必要がある。その具体的な内容は、傷病の症状、治療の方法と内容、治療の必要性および実施しない場合の予後、治療のリスク、治療実施時の予後、代替療法の有無であり、これらについては必ずカルテに記載しておくことが重要である。一方、注意義務とは不良な結果発生に対する、予見可能性を前提とする予見義務、回避可能性を前提とする回避義務のことであり、注意義務の基準となる医療水準は、診療当時の臨床医学の実践における医療水準である。また、注意義務の程度は医師が専門としない科の疾患を診療した場合においても軽減されないことに留意が必要である。 医事紛争予防という観点からも、今一度、各医療機関における医療安全管理体制の確認を求めるものである。 【京都保険医新聞_第2617号_2007年12月17日1面】 |
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