主張/マスコミの一時的・扇情的な報道に
目を奪われるな
9月23日に自由民主党の総裁選挙が行われ、25日に国会指名、翌日に福田康夫内閣が誕生した。この首相交代に至るまでの過程では新聞やテレビによる報道が大きな役割を果たしている。
大きな転機となったのは参議院での歴史的とも言われる与野党の勢力逆転である。政治不信を印象づけるような報道が相次ぎ、そのために多くの票が野党側に流れた。しかし報道の大部分を占め、選挙に際して議論の中心になったのは安倍晋三前総理大臣が掲げた「美しい国」や「戦後レジームからの脱却」という理念や「国民投票法」「改正教育基本法」をはじめとする自由民主党のこれまでの懸案であった法を成立させたという実績に対する評価ではなく、歴代の総理大臣を通じて存在した年金問題と政治資金問題であった。
もちろん後者が重要な問題でないわけではないが、国の方向性を決める総理大臣の理念と実績とが議論となり、国会の勢力分野の変化や内閣の交代につながったのではなく、積極的な報道が集中した分野に対する関心で国民の投票が影響を受けたと考えられることに心を留める必要がある。
複雑・膨大な経過と現状の分析をしてみて初めて理解できる政策問題と異なり、金銭にかかわるスキャンダルは単純明快で誰にでも理解でき、意見の集約が容易である。しかしこれは前々首相であった小泉純一郎氏の手法にも通じるものであり危険が伴う。一時の熱狂に国家の方針が大きく影響されるようでは極論であるが戦争への危機さえあり得るのである。
今回の政変は直接に小泉時代の多くの矛盾・弊害が反省・批判されて行われたものではないという点を改めて認識し、マスコミによる一時的・扇情的な報道に目を奪われず、地道にこれまでの施策を検討・見直して自らの意見を持つことを国民にも政治家にも求めたい。
【京都保険医新聞_第2606号_2007年10月1日1面】 |