2016診療報酬改定こうみる(4)  PDF

2016診療報酬改定こうみる(4)

外保連要求で点数引き上げも汎用点数は据え置き

外 科 副理事長 林 一資

 外科系の技術評価については、「外保連の要望」から、今回の新設要望210項目中考慮されたのは54項目、改正要望202項目中考慮されたのは67項目である。また、「外保連試案第8・3版」を踏まえ、それらの手術のうち、300項目が引き上げられている。

 処置では、創傷処置が100cm2未満を除いて5点ずつ引き上げられた。また、創傷処置、熱傷処置の乳幼児加算が5点引き上げられた。爪甲除去(麻酔を要しないもの)が15点引き上げられた。

 手術では、創傷処理について、「3.筋肉、臓器に達するもの(長径10cm以上)」が「イ.頭頸部(長径20cm以上に限る)」と「その他」に区分され、「イ」については点数が引き上げられた。なお、「イ」については、長径20cm以上の重度軟部組織損傷に対し、全身麻酔下で実施した場合に限り算定できる。

 また、創傷処理、小児創傷処理(6歳未満)はステープラーで縫合した場合も算定できることが明記された。 

 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外)について、「3.長径6cm以上」が「3.長径6cm以上12cm未満」と「4.長径12cm以上」に区分され、「4」の点数が引き上げられた。

 施設基準の届出の簡素化が図られ、これまで届出が必要であった手術点数の告示の通則5 、通則6に掲げる手術については、地方厚生局に届け出る必要はなくなった。ただし、年間手術件数の院内掲示や、説明文書の交付等、施設基準は満たす必要があるので注意されたい。

 外保連の要求を踏まえ、引き上げられた点数があることは喜ばしいが、開業医にとって汎用の点数が据え置かれている点には不満がある。なお、湿布薬の1処方70枚制限の評価については、整形外科に譲りたい。

湿布薬投与制限は医師の処方権侵害だ

整形外科 医療安全対策部会理事 宇田憲司

 今年度の改正では、医薬品等の効率化・適正化に関連して、投薬において、入院外の患者に湿布処方をする場合、1回(1処方)原則70枚までとされた。70枚を超えて投薬した場合、処方料・調材料・調剤技術基本料および超過分薬剤料は、算定不可とされる。しかし、医師が疾患の特性等により必要性があると判断し、やむを得ず超過する場合は、その理由を処方せんおよび診療報酬明細書(レセプト)に記載すれば可能となる。

 また、湿布薬を投与した場合は、枚数にかかわらず、レセプト「摘要」欄に所定単位当たりの薬剤名、投与量を記載した上で、「1日用量」または「投与日数」を記載することになった。処方せんで投薬する場合は、処方せんに「1回当たりの使用量および1日当たりの使用回数 」または「投与日数」を記載することになった。

 今回の湿布薬の投与制限は、財務大臣と厚労大臣との間で政策的に決定されたことだが、医師の処方権を侵害するものであり、納得できない。特に傷病部位が多い患者には70枚を超えることが多くある。医学的必要性があるにもかかわらず、一律の算定制限によってコメントをレセプトに注記しなければならないなど、事務的煩雑さも増える。

 リハビリテーションでは、運動器リハビリテーション(リハと略す)(1)の項目が1単位180点から185点に増点された。廃用症候群リハが独立して(脳血管疾患などリハの施設基準が必要)、廃用症候群リハビリテーション料(1)180点、同(2)146点、同(3)77点が新設された。

 要介護被保険者等の維持期リハへの介護保険への移行等に関連して、標準的算定日数を超えた維持期に月13単位に限り算定可能の、脳血管疾患等リハ、廃用症候群リハ、運動器リハについては、対象が要介護被保険者等(入院中の患者を除く)場合、60/100に減額される(これまでは90/100であった)。例えば運動器リハ事例でみると、運動器リハ料(1)111点、同(2)102点、同(3)51点となり、介護保険のリハの実績がない医療機関では、更に80/100で算定して(合計48/100となる)同(1)89点、同(2)82点、同(3)41点となる。標準算定日数の1/3の期間を経過すると(例えば運動器リハでは51日以降)、直近3カ月以内に目標設定等支援・管理料を算定していない場合は、上記の各々の点数の90/100の点数で算定する(16年10月1日以降)。

 運動器不安定症の定義と診断基準が明確化された。定義は「高齢化にともなって運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態」である。診断基準としては、高齢化にともなって運動機能低下状態をきたす下記の11の運動器疾患または状態の既往があるか罹患している者で、日常生活自立度判定基準がランクJまたはAに相当し、運動機能が(1)開眼片脚起立15秒未満、または、(2)3mTUGテスト11秒以上のいずれかの機能評価基準にある者を運動器不安定症とする。11の疾患・状態には、脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後弯・側弯など)、下肢骨折(大腿骨頸部骨折など)、骨粗鬆症、変形性関節症(股関節、膝関節など)、腰部脊柱管狭窄症、脊髄傷害(頸部脊髄症、脊髄損傷など)、神経・筋疾患、関節リウマチおよび各種関節炎、下肢切断後、長期臥床後の運動器廃用、高頻度転倒者が挙げられる。

 手術では、増点、新設項目がみられる。難治性骨折電磁波電気治療法、同超音波療法の対象に、骨折非観血的整復術と骨折経皮的鋼線刺入術が追加された。超音波骨折治療法の対象に、骨切り術と偽関節手術が追加された。

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