何のため?誰のための3施設合築?  PDF

 何のため?誰のための3施設合築?

(リハセン・児福センター・こころセンター)

関係者集いフォーラム開く

3施設合築の問題点を次々と指摘

 協会も加盟する「京都市3施設の合築方針を考える実行委員会」(事務局・京都社会保障推進協議会)は12月5日、京都市のこどもみらい館で第2回目となるフォーラムを開催した。同実行委員会は、2015年3月末に廃止された京都市身体障害者リハビリテーションセンター(旧称)附属病院(市リハセン附属病院)の廃止反対を訴える「京都のリハビリを考える会」(事務局・京都府保険医協会)が、市リハセンとともに京都市の合築対象とされる京都市児童福祉センター・京都市こころの健康増進センターの関係団体・個人とともに構成。今フォーラム以前から15年2月の第1回フォーラム、同年8月の京都市当局への要望書提出・懇談等、活発な動きをつくっている。今フォーラムには実行委員会団体の構成員をはじめ、関係者20人が集った。フォーラムは、京都市が合築を予定する3施設のうち、児童福祉センターをめぐる問題を中心に討論した。

「障害」のみに着目した合築に問題あり

 はじめに実行委員会から「3施設合築問題の経過」と「児童福祉センター」をめぐる制度的背景と題し、今井陽一氏(PT・京都市職労民生支部)が基調報告。市リハセン附属病院廃止に端を発し、着実に進められる合築の現状と問題点を報告。とりわけ児童福祉センターの他2施設との合築は、施策対象が障害のある子どもたちだけの施設ではなく、「障害」に着目した合築という話自体に無理があると指摘。さらに、各施設は医療的な機能に格差があり、予想される矛盾は大きいとした。その上で三つの論点を整理した。(1)合築によってそれぞれの施設の機能は充実するのか?(2)3障害や児・者の相談支援がワンストップ化するのか?(3)合築だけが目的化しているが、その前に解決すべき課題があるのでは?—。

児福センターは機能拡充しかありえない

 基調報告に続いて、「私たちの求める京都市児童福祉センターの機能拡充と京都市方針への不安・疑問」をテーマにリレートークを行った。

 報告者は、池添(京都障害児者の生活と権利を守る連絡会)、協会副理事長の渡邉、市原(こどもたちの保育・療育をよくする会)、津田(京都市職労民生支部・京都市児童福祉センター分会)の各氏。

 池添氏は「京都市児童福祉センターの歴史とはたしてきた役割と課題」と題し、1931年の京都市児童院以来、センターの果たしてきた役割と意義を紹介。05年以降の障害者自立支援法施行で、児童福祉分野にも介護保険同様の個別利用契約が導入されたが、子どもの発達に関し、基本的に同センターを必ず通ってからサービス利用につなぐ「京都方式」によって、公的責任を担保していることを紹介。子どもと保護者にとって、同センターが最前線かつ拠点であり続けていると訴えた。

 協会の渡邉副理事長は「小児科医からみる児童福祉センターの意義」として、協会の有井・森両理事からのコメントを紹介。小児科開業医が日常診療において、発達遅滞・発達の偏りのある子どもたちと接する機会が少なくないが、診断・療育を一般診療所が取り組むことは難しく、児童福祉センターの存在が不可欠であること。雇用・貧困・介護問題等といった厳しい社会的背景の中で子育て・子育ちの困難が広がる中、児童福祉センターは時代のもっとも大切な部分を担っており、かつ全国でも数少ない診療所併設型の施設である。拡大・拡充はあっても、縮小するというのは現状認識の欠如だと指摘した。

 市原氏は、自ら勤務する療育施設の子どもたちのほとんどが1歳半検診で発達の遅れや偏りを指摘されていたにもかかわらず、療育につながったのは4歳を過ぎてから。発見から療育につながるまでの時間がかかりすぎており、保護者に耐えがたい不安を与えていると指摘。児童福祉センターが「京都方式」を守りつつ、子どもたちへの療育保障を早期に行えるよう、センターの人的・物理的な力を高める必要性を訴えた。その上で、療育は児童だけでなく、保護者支援と両輪で進めないと、成立しない。児童という時期に着目した支援をせずに、障害という角度でのみ着目してしまえば、「落ちていくもの」がたくさんあると述べた。

 津田氏は、児童福祉センターの「診療療育科」に臨床心理士として勤める立場から、虐待通告・対応で職員が深夜1時、2時まで対応している現状を報告。

 発達相談では京都方式によって市全体の子育て相談のニーズを把握し、利用者や子どものニーズに合わせた支援ができると述べつつも、相談件数増加により、ニーズに応じたケースワークができないことや、相談待機・療育待機が増加している等の困難があるとした。その上で、虐待や子どもの発達の弱さが発見された後の支援が中心の現状を打開し、児童福祉センターは「発見後支援・福祉施策」、地域が「発見前支援」を実施する新たな体制の必要性を展望した。

それぞれの課題は合築では解決できない

 報告につづき、フロアからは、市リハセンの看護師、市の保健師、子どもたちの一時保護所の保育士が発言した。

 最後にまとめに立った渡邉副理事長は、「3施設を合築してもそれぞれの問題は解決できない。雇用問題、貧困、家庭にひとたび何かが起こると、生活が成り立たなくなる。こうした社会背景の中で児童福祉センターの必要性が高まっている。一方で、児童福祉センターの機能は需要に追い付いていない。拡充しかない。縮小は考えられない。現在、ワンストップで対応している児童福祉センターは、第2、3、4とその数を増やしていくしかない。それが私たちが運動を通じて求めるべき方向性だ」と述べた。

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